近年増加傾向にある大雨。ゲリラ豪雨や夕立の様に突然降り始めて短時間で晴れてしまうものから、数時間から数日にかけて続く長時間の大雨と様々です。
この記事では、大雨の原因の1つである積乱雲について詳しく解説しています。どのようにして発生するのか、長時間の大雨が続く理由など解説しているので、大雨の発生について理解することができる内容になっています。
他にも、大雨による災害に備えて何をすればいいのか紹介しているので、災害対策をする際の参考にしてください!
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目次
積乱雲ってなんなの?

温かい季節になると、夕立やゲリラ豪雨といった急に降り始める激しい雨が増えてきますよね。このような激しい雨を降らせているのが積乱雲です。
私たちがよく目にする雲は横に長い雲なのですが、積乱雲は強い上昇気流により上空に向かって成長します。その高さは、成層圏(高度8~17km)に届くほどの巨大な雲になるほどです。

積乱雲の降水量はとても多く、短時間に大量の雨が降ります。時には積乱雲が帯状に広がることで、集中豪雨を引き起こしたりします。
また、雹(ひょう)・霰(あられ)・雷・突風・竜巻を伴うこともあり、積乱雲は激しい気象現象を引き起こす警戒すべき雲でもあります。
積乱雲はどうやってできるの?
積乱雲ができるには主に3つの条件があります。その条件とは、
- 暖かく湿った空気がある
- 大気が不安定である
- 空気が上昇する状況である
です。それぞれの条件が積乱雲を形成するうえで、具体的にどう影響しているのか解説していきますね!
暖かく湿った空気

雲とは、地上にある水蒸気を含んだ空気が上昇し、上空で冷やされることにより氷の粒や水滴が白く見えるようになったものです。氷の粒と水滴の固まりという訳ですね。
ということは、積乱雲を形成するうえで欠かせないものは水蒸気ということです。地上では、温度が上がるにつれて水蒸気が多く発生します。暖かく湿った空気ですね。
また、暖かい空気は軽いために上昇しやすく、水蒸気を多く含んでいるので雲を形成しやすいのです。
大気が不安定

天気予報などで耳にする「大気が不安定な状態」とは、上空の空気が冷たく地上の空気が暖かい状態のことを指します。
空気は冷たいほど重く、暖かいほど軽くなる特徴があります。上昇した暖かく湿った空気は、上空の冷たい空気よりも暖かいためさらに上昇していくため、雲は上へ上へと大きくなっていくのですね。
このように、空気が上昇する流れのことを「上昇気流」と呼びます。反対に、下降する流れを「下降気流」と呼びます。
積乱雲の中では強い上昇気流が発生しているため、通常であれば雨となって降るはずの水滴や氷の粒は降らずに上空に留まります。つまり、雨のもとになるものが蓄積されているわけですね。
空気の上昇
空気が上昇する条件は主に4つあります。気温の上昇もそうですが、他にも条件があるので紹介しましょう。
空気が暖まることによって上昇する

気温が上がって地上の空気が暖められると上昇気流が発生します。6~10月の暖かい季節に大雨が降りやすいのはこのためですね。
このような大気の対流によって発生する上昇気流を「対流性上昇気流」と呼びます。
近年では、季節のせいだけでなく温暖化やヒートアイランド現象も原因の1つだと考えられています。詳しくは後の項目で解説しますね。
山にぶつかることによって上昇する

暖かく湿った空気が山の斜面を駆けのぼり、そのまま上昇していくことで上昇気流となります。このような地形によって生ずる上昇気流を「地形性上昇気流」と呼びます。
例えば、同じ地域でも平地と山では天気が違ったりします。一方は雷が少ないのに、もう一方は雷が多かったり・・・。
また、東日本と比べると西日本では集中豪雨による被害が多かったりします。一概に地形のせいとは言い切れないのですが、要因の一つであることには変わりありません。
低気圧によって上昇する

わかりやすいものだと台風(熱帯低気圧)ですね。台風は多数の積乱雲が集まり、渦を巻いたものです。天気予報で台風の進路予測を見ると、雲が渦を巻いていますよね。
台風のような規模の大きな低気圧による上昇気流のことを「大規模運動による上昇気流」と呼びます。
この上昇気流は台風の目の周辺で発生しており、台風の目では下降気流となっています。台風の時に大雨が降るのは、台風が積乱雲の集まりだからなんですね。
ちなみに、台風は陸上では発生しません。熱帯地域の海上でのみ発生します。理由は、陸上では水蒸気の量が少ないからです。つまり、台風を作るための燃料不足ということですね。
暖かい空気と冷たい空気がぶつかって上昇する

暖かい空気と冷たい空気がぶつかると、暖かい空気のほうが軽いため上へと押し上げられます。押し上げられることで上昇気流が発生し、上空へと上るわけですね。
これは、前線の活動によるもので「前線性上昇気流」と呼びます。梅雨前線や秋雨前線、寒冷前線といった言葉は、一度は聞いたことがあるでしょう。ちなみに、梅雨前線や秋雨前線は停滞前線ですね。
前線ってよく聞くけど、具体的になんなの?と疑問に思いますよね。前線とは、冷たい空気と暖かい空気の境目が地上と交わった部分のことです。
つまり、前線のあるところでは上昇気流が発生しやすいため、天気が崩れやすいということです。
積乱雲の世代交代
積乱雲は激しい気象現象を引き起こしますが、その一生は短く、30分~1時間程度とされています。
突然激しい雨が降ったと思ったら、数十分後には何事もなかったかのように晴れた、なんて状況は一度は経験しているはずです。
じゃぁ、積乱雲による雨はすぐ晴れるものなんだ!と喜ぶのは早いです。積乱雲は、時に世代交代を繰り返していくつもの積乱雲を生みだします。長時間に及ぶ大雨などは、積乱雲が連続して生まれるために起こるのですね。
世代交代のメカニズム

積乱雲を形成している水滴や氷の粒が、強い上昇気流でも耐えられないほど大きくなると、一気に落下します。つまり、激しい雨や雹が降るわけです。
その際、雨と一緒に下降気流が発生します。さて、ここで思い出してください。暖かい空気と冷たい空気とでは、冷たい空気の方が重いのでしたね。
この下降気流で冷たい空気も地表へと降ります。地面にぶつかった冷たい空気は地面をつたって広がっていきます。
その冷たい空気に押し出されるように、地表にある暖かく湿った空気は上昇をして積乱雲を形成します。新たな積乱雲が生まれるわけですね。
【積乱雲の一種】スーパーセルとは?

時に高度が20kmを超える、超巨大な積乱雲です。積乱雲は通常30分~1時間程度の寿命なのですが、スーパーセルは数時間と長く、まさに最強の雲と言えるでしょう。
引き起こす気象現象も凄まじく、洪水となるほどの大雨、大量の雹と霰、災害級の竜巻や突風・落雷など、通常の積乱雲とは桁違いの被害を及ぼすほどです。
最も発生しやすい国はアメリカですが、条件さえ整えば世界中のどこでも発生します。過去には日本でもスーパーセルが発生し、被害をもたらしました。
100年前と比べて気温の上昇など気候の変化が見られるなか、これから先、日本でもスーパーセルの発生に注視する時代がやってくるかもしれませんね。
【積乱雲ができやすい!?】近年では豪雨が多発

近年では、アスファルト道路が整備されたりコンクリートの建物が増えることにより、地面が熱を持ちやすくなってきています。
そのため、地面付近の空気の温度が上昇して積乱雲が発生しやすい状況になっているのが現状です。事実、1時間降水量が50mmを超える大雨の発生回数は増加傾向にあります。
過去に大雨による被害のない地域でも、気候の変化により記録的な大雨が降る可能性は十分にあるでしょう。これから先、大雨による災害への対策を行うことが重要になりますね。
大雨による災害に備えよう

とはいっても具体的に何をすればいいんだろう?と疑問に感じてしまうものです。一番重要なのは情報収集ですね。避難をするか決めるのは自分の判断になります。ですので、その判断を下すための情報を収集することが重要です。
こちらの記事では、情報収集をするうえで欠かせない「大雨による警戒レベル」について詳しく解説しています。他にも、避難を開始するタイミングなど、避難に役立つ情報を紹介しているので、チェックしてください!

そして、避難場所と避難経路を決めることも大切です。お住いの地域のハザードマップを参考に、今住んでいる場所は洪水や土砂災害に巻き込まれないか確認しましょう。
危険であれば、あらかじめ避難場所を決めておけば、いざという時にスムーズに避難することができます。
また、電気・ガス・水道といったライフラインがストップした場合に備えて、備蓄しておくことを強く勧めます。被災地では、あらゆるものが手に入らなくなります。日常から備えておくことで、災害時でも慌てることはありませんよ!
こちらでは東日本大震災で被災した経験をもとに、実際に役に立ったものや「こんなものがあれば良かった」というものをピックアップしています。どんなものを備蓄していいのかわからない方はチェックしてください!

まとめ
積乱雲は、暖かく湿った空気となりやすい6~10月に発生しやすいものです。大気が不安定になりやすいためですね。また、積乱雲が世代交代をすることにより、長時間の大雨となる場合があります。
そんな激しい気象現象を引き起こす積乱雲。近年では気温の上昇などにより積乱雲が発生しやすく、それに伴い大雨の発生件数が増加傾向にあります。
災害となるような大雨に備えて、日常から対策をすることが重要になってきます。情報収集・避難場所や避難経路の選定・備蓄、これらを行うことで自分の命を守る事ができるでしょう。
