前震・本震・余震。聞いたことがある言葉だし意味も何となくはわかるけど・・・。実は、詳しく知ると今まで知らなかった現状や、勘違いしていたことがわかってきます。
この記事では、一連の地震活動の中で「前震」に焦点をあてて詳しく解説しています。前震・本震・余震の違いや、前震の決め方を解説しているので地震予測の現状を知ることができるでしょう。
他にも、過去に前震を伴った巨大地震の紹介や、前震にまつわるちょっとした疑問にも答えています。
また、知識だけでなく地震に備えて何が重要かを解説しているので、地震対策をするうえで役立つ内容になっていますよ!
出典:https://www.photo-ac.com/
目次
地震の本震・前震・余震の違い

本震とは、ある地域で一定の期間内に連続で発生した地震の中で、いちばん規模の大きい(揺れの大きい)地震のことをいいます。
前震とは、本震となる地震の前に発生していた地震のことで、余震は本震の後に発生した地震のことです。
こうしてみると、しっかり定義されているように感じますが、実は基準が曖昧なんですね。ある地域で一定の期間内とありますが、具体的にどこまでの範囲で、どこまでの期間で、という基準が決められていません。
それもそのはず、現状では一連の地震の動きを完全に予測することができないからです。ですので、余震といっても数日の期間なのか、数ヶ月続くものなのか、その時になってみないとわからないのです。
地震の前震・本震は発生してからわかる

前の項目では余震の話をしましたが、本震や前震も同様です。例えば、この記事を読んでいる最中にマグニチュード8の巨大地震が襲ったとしましょう。あなたの住んでいる所では震度6弱の揺れを観測しました。
一見すると、「本震だ!」と感じてしまいますが、その後にさらに巨大な地震が発生する可能性があるかもしれませんよね。実際、それ以上の地震が発生したら、その地震が本震となります。
「そういうのって予測できないの?」と疑問に思いますよね。答えは「予測できない」のが現状です。その時になってみないと、本震と前身の区別がつかないのです。
これは実際に起こった事ですが、強い地震が発生した際に本震と発表したのですが、その後さらに巨大な地震が発生し、本震を変更した事例があります。激甚災害となった東日本大震災と熊本地震です。
同程度の地震が発生した場合の前震と本震は?

同程度の地震が発生した場合には、規模の大きな地震が本震となります。過去には同程度の強さの地震が複数回発生したことから、本震が決めにくい地震がありました。
このような地震でも、最終的には一番規模の大きな地震が本震とされています。ちなみに、余震に関しても同様です。
過去の巨大地震での前震

ここでは、過去に発生した巨大地震において前震が発生したケースを紹介していきます。なお、ここでのマグニチュードは「モーメントマグニチュード」のことを指します。
1960年 チリ地震
観測史上世界最大の地震であるチリ地震は、地球の裏側にある日本にまで津波が押し寄せ甚大な被害をもたらしました。
本震のマグニチュード9.5、最大震度は改正メルカリ震度Ⅺ(2番目に大きい震度「壊滅的」)、気象庁地震階級では震度7相当とされています。
主な前震として、本震の1日前にマグニチュード8.2、本震の15分前にマグニチュード7.9の地震が発生しています。前震の段階で大災害レベルとは恐ろしいですね・・・。
1995年 兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)
日本では初めての都市部を震源とした直下型地震であり、震度7が導入されてから初めて最大震度7が観測された地震でもあります。
本震のマグニチュードは6.9、最大震度は7です。この地震の前日に4回の地震が発生しています。
しかし、いずれも小さな地震(最大でマグニチュード3.3、震度1)であったことから、前震に気が付かない方もいたことでしょう。
2003年 宮城県北部地震
前震・本震・余震を含め、1日に震度6弱の地震が3回も発生した心が折れそうになる地震です。
この地震では、気象庁マグニチュード6.4、最大震度6強が本震とされています。前震は、本震の7時間前に発生した気象庁マグニチュード5.6、最大震度6弱の地震です。
ちなみに、震度5弱を含めると1日で震度5弱以上の地震が4回発生したことになります。ここまでくると「何かの呪いか」と疑ってしまいますね。
2011年 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
日本国内では観測史上最大の地震になります。自分の住んでいる町が一瞬で壊滅した情景は今でも鮮明に覚えています。
この地震のマグニチュードは9.0、最大震度は7です。主な前震は、本震の2日前に発生したマグニチュード7.3、最大震度5弱ですね。
マグニチュード9.0の地震が発生するまでは、こちらが本震と判断されていました。後に変更され、前震となりました。
この地震では前震よりも余震の頻発が注目されましたね。この頃はまだ、気象庁の発表で「余震」という言葉が使われていました。
2013年 ソロモン諸島沖地震
なかなかマニアックな地震です。「ソロモン諸島ってどこ?」という疑問にお答えしましょう!みんな大好き「オージービーフ」でお馴染みオーストラリアの北東に位置する小さな島々からなる国です。
マグニチュード8.0の巨大地震で、本震の約2週間前からマグニチュード6以上の地震が7回、マグニチュード5.0~5.9の地震が16回発生しています。
マグニチュード4以上という条件であれば40回以上も発生しており、前震の活動が非常に活発な例といえますね。
2016年 熊本地震
ここでちょっと豆知識。現在、気象庁が発表している地震の情報では「余震」という言葉が使用されていないのはご存知でしたか?以前は使用されていた言葉ですが、使用をやめるきっかけとなったのが熊本地震です。
この地震のマグニチュードは7.0、最大震度は7になります。本震の28時間前にはマグニチュード6.2、最大震度7となる地震が発生しており、この地震が当初は本震とされていました。後に変更されます。
なお、本震までの間に震度5弱を超える地震が7回も発生しており、震度3以上となると約70回も発生しています。前震が有感地震(震度1以上)となったものとしては、1996年以降最多です。
さて、ここで冒頭の余震の話になりますが、今まで気象庁では余震の確率を発表していました。ですが、熊本地震では過去の経験則が当てはまらないとして発表を見送っています。
その後は、余震の確率ではなく「最大震度〇以上となる地震の発生する可能性は平常時に比べ〇倍程度」といった表現をしています。それほど具体的な地震の予測というのは困難だということですね。
前震は必ず起こるものなの?

結論から言えば「前震は必ず起こるものではない」です。多くの地震の場合「本震ー余震型」と呼ばれる、本震から始まるものです。つまり前震が発生していないということですね。
とはいえ、前震を伴った地震があることも事実。前の項目で解説した地震は前震を伴っていますよね。特に、本震のマグニチュードが大きな地震ほど前震を観測しやすいというデータがあるほどです。
「前震が起こるのか起こらないのかどっちやねん」とモヤモヤしてしまいますが、地震が発生してからじゃないとわからないのが現状です。それほど、地震を解析・予測することは難しいことだと認識しておきましょう。
「巨大地震の前震!?」と身構える必要はない

地震が頻発すると「巨大地震の前震なのでは!?」と身構えてしまうものです。様々なメディアでも専門家なる人が現れては「巨大地震となる可能性はあります」と不安を煽るようなことを言っていますよね。
前の項目でも解説しましたが、地震の確実な予測というのは現状ではできません。できていれば地震による被害はなくなっています。
不安になる気持ちはわかりますが、確実ではない情報に惑わされて不安になったり身構える必要はありません。重要なのは次のことです。
地震に備えて出来ることをしよう!

いつどのような地震が発生しても、落ち着いて避難できるようにしておくことが最も重要だと僕は感じます。
津波の話になってしまうのですが、東日本大震災の際「津波てんでんこ」の意識が徹底された地域の小中学校では、全員が生存できました。日常からの訓練や災害への意識がしっかりしていたためですね。
地震が発生したらどう行動すべきか、どこに避難すべきか、日常から対策をしておけばいざという時にスムーズに行動ができます。
情報に惑わされて不安になるよりも、日常から地震対策をした方が身を守るために有効ではないでしょうか。
「地震」のカテゴリーでは、いつでも簡単にできる避難訓練や、地震発生時にはどのような行動をすべきかを紹介した記事があります。他にも、地震に対する知識も身につけることができるのでチェックしてください!
まとめ
前震とは本震の前に発生した地震のことで、地震の規模は本震より小さいものです。多くの地震の場合は「本震ー余震型」なので、前震が発生することは少ないと言えます。
地震が頻発すると「巨大地震の前震!?」と身構えてしまうものですが、現状ではその地震が前身であるかを判断することができません。つまり、前震・本震・余震の一連の地震が発生しないとわからないのです。
地震が頻発している状況では、様々な情報が飛び交うものです。中には不安を煽るようなものも・・・。ですが、地震を確実に予測することは現状ではできません。
不確実な情報に惑わされるよりも、いつどんな地震がきても慌てずに避難ができるように、日常から地震対策をすることが自分の身を守ることに繋がります。
