疫病

~人類を脅かす自然災害~パンデミックの歴史を振り返る【後編】

この記事では、前回に引き続き過去に発生したパンデミック(感染症の世界的な流行)を紹介します。前回を見ていない方は「こちら」からどうぞ!

今回も感染症の歴史だけでなく、症状や感染経路について解説しています。パンデミックはこれから先も必ず起こるでしょう。

過去の歴史を知るだけでなく、感染症の対策としても役立つ内容になっているので、当記事を活用してください!

出典:https://www.photo-ac.com/

パンデミックの歴史①【天然痘】

天然痘は紀元前の時代からヨーロッパで流行しており、多くの死者を出していました。世界的に流行したのはコロンブスがアメリカ大陸までの航路を発見してからです。

それまで天然痘が存在していなかったため、アメリカの先住民は免疫をもっておらず、侵略に来たヨーロッパの人や奴隷としてアフリカ大陸から連れてこられた人が感染源となり一気に感染が拡大します。

この感染拡大により、先住民の9割は死亡したと言われています。有名なアステカやインカ帝国が滅んだ原因の1つが天然痘とされていますね。

その後は18世紀にインドで300万人、ヨーロッパでは毎年40万人が死亡するなど、世界中で天然痘が流行しますが、ワクチンの開発・普及により徐々に感染者は減っていきます。

そして1980年、WHOは「地球上からの天然痘根絶宣言」をすることにより、人類史上初めて根絶できた感染症となったのです。

天然痘ってどんな感染症?

感染力が非常に強く、患者から落ちた「かさぶた」からでも1年以上感染させる力を持つほどです。感染経路は「飛沫感染」「接触感染」「空気感染」ですね。

潜伏期間は7~16日で、急激な40度前後の高熱・頭痛・腰痛で始まり、3~4日で一度解熱します。その後は、顔面を中心に発疹ができ、水疱→膿疱へと変わっていき、膿疱になった時に再び40度前後の高熱となります。(発症してから7~9日目)

このとき、天然痘ウィルスは呼吸器や消化器をも侵しており、呼吸障害や二次感染(敗血症・脳炎・出血)を引き起こし、死に至るのです。天然痘の致死率は20~50%と高いのはこのためですね。

治癒する場合は2~3週間で快復に向かいますが、膿疱は酷いニキビ跡のようになり、一生残ってしまいます。「あばた」とも呼ばれます。

生物兵器としての天然痘

日本では天然痘ウィルスを最も危険な感染症として「一類感染症」に指定していますまた、WHOは最も危険度の高い「リスクグループ4」として、研究施設等で取り扱う際の「バイオセーフティーレベル」は最高の4としています。

米国CDCでは生物兵器に使用される可能性が高いウィルスとして、最も危険度・優先度の高い「カテゴリーA]に分類しています。これは【前編】で紹介した「エボラウィルス」も同様です。

アメリカでは天然痘ワクチンを全人口分備蓄するといった対策をとるなど、天然痘ウィルスを使用したテロに備えている国もあります。

自然災害だった疫病が「人災」となって人類に再び襲いかかる可能性があります。せっかく根絶に成功したのに「なんだかなぁ・・・」って気分ですよね。

パンデミックの歴史②【マラリア】

古くは紀元前となる古代エジプト・古代ギリシャにまで遡ります。マラリアは昔から世界中で蔓延しており、アフリカ・ヨーロッパを中心に猛威を振っていたのです。

16世紀になるとヨーロッパからの移住者やアフリカからの奴隷によってアメリカ大陸でもマラリアが広まります。

第二次世界大戦が始まると、ジャングルに長期滞在する兵士が多数いたため、アメリカ軍、日本軍共にマラリアの感染者は大勢いました。特に日本軍は、5万人を超える感染者・死者がでたほどです。

現在では、日本・ロシア・カナダ・スウェーデンなどの国々は撲滅に成功していますが、アフリカ・東南アジア・中南米・中東では毎年2億人を超える感染者と、40万人を超える死者がでるパンデミックとなっています。

マラリアってどんな感染症?

マラリアは「マラリア原虫」を持つ「ハマダラカ(蚊)」によって感染します。蚊は吸血する際に唾液を注入するのですが、その時に病原菌が体内に侵入するわけです。人から人へは感染しませんが、輸血によって感染する可能性はあります。

潜伏期難はマラリアの種類によって変わりますが、発症すると悪寒・震え・体温の上昇が1~2時間続きます。初期症状ですね。その後、「熱発作」と呼ばれる症状が現れます。

具体的には、熱を感じるようになり頭痛・関節痛・顔面紅潮・嘔吐を伴う高熱が4~5時間続きます。この熱発作は間隔を空けて繰り返し襲ってくるのですが、周期はマラリアの種類によって変わってくるのです。以下に種類別の特長をまとめますね。

種類 潜伏期間 熱発作の周期
熱帯熱マラリア 7~14日 不規則(毎日)
三日熱マラリア 12~17日 48時間
卵型マラリア 11~18日 48時間
四日熱マラリア 18~40日 72時間
サルマラリア 10~12日 24時間

特に熱帯熱マラリアは症状が重く、早期に適切な治療を行わないと脳性マラリア(意識低下・言語のもつれ・昏睡状態)・急性肝不全・重症貧血などの合併症を併発するため注意が必要です。

マラリアは潜伏期間の長さから帰国後に発症することも珍しくありません。「三大感染症」の1つとして猛威を振るっているマラリア。流行している国(熱帯・亜熱帯地域)に行く際には「蚊」の対策が重要になります。

パンデミックの歴史③【ポリオ】

ポリオは紀元前、古代エジプトの石碑に患者の様子が描かれているほど古い感染症です。20世紀に入るまで大規模な流行は知られていませんが、多くの人が感染してきたとされています。

20世紀に入るとヨーロッパ、アメリカといった先進国で大流行します。流行のピークであった1940~1950年代には、世界中で毎年50万人を超える死者・麻痺患者がでるほどです。

有名な人では、第二次世界大戦時のアメリカ大統領「フランクリン・D・ルーズベルト」がポリオに感染したことによる後遺症から、下半身がほとんど麻痺していたそうです。

日常生活では車椅子を使用していたそうですが、車椅子姿を見られるのを嫌ったため、訪問先の植木などをカムフラージュのために植え替えさせるといった神経質な場面がありました。

そのため、当時のアメリカ国民のほとんどがルーズベルトに障害があった事を知らなかったのですから驚きです。

ポリオってどんな感染症?

ポリオってあまり聞きなれない感染症ですよね。「急性灰白髄炎」とも呼ばれており、典型的な症状の一つに足が麻痺症状があります。特に5歳以下の小児が感染しやすいですね。

ポリオウィルスは食べ物の通り道である「咽頭(いんとう)」や小腸の粘膜で増殖し、感染者の排泄物と一緒に排出されます。これが感染源となり、汚染された水や食べ物を摂取することにより感染するのです。「経口感染」ですね。

非常に強い感染力をもつポリオウィルスですが、感染者の90~95%は症状が現れません。約5%は発熱・嘔吐・頭痛・咽頭痛といった症状に終始します。

0.1~2%はウィルスが脊髄に感染して神経細胞を破壊することにより、手足の麻痺が起こります。多くの場合麻痺は完治しますが、麻痺症状が1年以上続くような場合には一生後遺症が残ることも。

ウィルスが脳にまで侵食すると、呼吸困難といった呼吸障害を起こし、死亡するケースがあります。死亡率は小児で2~5%、成人の場合は15~30%、妊婦の場合は重症になる可能性が高いです。

パンデミックの歴史④【炭疽症】

炭疽症はもともと家畜伝染病として古くから存在しています。その高い致死性から「家畜の黒死病」として猛威を振るいます。

家畜伝染病ではありますが、人にも感染する感染症で1600年代には南ヨーロッパで6万人の死者がでたそうです。1958年には全世界で2~10万人が罹患したとされています。

現在でも全世界で感染が確認されていますね。とはいえ、今まで紹介してきた感染症の中では人への感染例は少なく、パンデミックとはいえません。

ではなぜ紹介したのか?その理由は後の項目で解説しますね!実はこの炭疽症が一番ヤバかったりします・・・。

炭疽症ってどんな感染症?

先にも解説しましたが、炭疽症は家畜伝染病なので家畜を通じて人へ感染するものです。具体的には、感染動物との接触により人の皮膚にある小さな傷から感染するケース、感染動物の肉を十分な加熱をせずに食べることによる感染といったケースがあります。

また、飛散している「芽胞」を吸い込むことによって感染するケースもあります。人から人へは感染しないので伝染病とはいえませんね。

芽胞(がほう)とは

簡単に言えば、めっちゃ抵抗力の強い細菌です。一部の細菌は「休眠状態」に入ると芽胞を形成し身を守ります。この状態になると煮沸消毒・アルコール消毒では効果がないほど抵抗力が強くなります。

感染原因によって症状は3つに分類されます。皮膚の傷口からの感染は「皮膚炭疽症」。感染動物の肉を食べることによる感染は「腸炭疽症」。芽胞を吸い込むことによる感染は「肺炭疽症」。潜伏期間は1~7日で、それぞれの症状は

種類 症状 未治療での致死率
皮膚炭疽症 ニキビのよう発疹・黒いかさぶた・リンパ節の腫れ 10~20%
腸炭疽症 高熱・激しい腹痛・血の混じった下痢・吐血 25~50%
肺炭疽症 インフルエンザのような症状・呼吸困難 90%以上

となります。全体の95%は皮膚炭疽症であり、腸炭疽症と肺炭疽症は「自然感染」では稀です。ただし「人為的」に感染させられたら、これ以上の危険はありません。

生物兵器としての使用

炭疽菌は培養のしやすさ、菌のもつ強い抵抗力、致死率の高さから生物兵器として利用される可能性が高いとされています。米国CDCでは、生物兵器に使用される可能性が高く、危険・優先度が最も高い「カテゴリーA」に分類されています。

「生物兵器とかありえないでしょ・・・」と思うかもしれませんが、実際に人を巻き込んだ事件は起こっています。

1979年、ソビエト連邦のスヴェルドロフスクにある生物兵器研究所では炭疽菌の漏出事故が起こり、周辺住民のうち96名が感染、うち66名が死亡しました。この事件は当時隠蔽されたそうです。

2001年、アメリカでは大手テレビ局や出版社、上院議員に対し、炭疽菌入りの郵便物が送りつけられるテロ事件が発生しました。この事件により、23名が感染、5名が死亡しました。

日本でも未遂ではありますが、1993年には炭疽菌を使用したテロは実際に起こっています。いずれの場合も、目的は炭疽菌を吸引することによる「肺炭疽症」を発症させる事ですね。

国家による生物兵器といての所持、テロによる生物兵器の使用と、炭疽菌は「自然災害」から「人災」へと変わった感染症といえるでしょう。

パンデミックの歴史⑤【梅毒】

梅毒が歴史上に現れるのは15世紀末とされています。梅毒の起源には2つの説があり、1つは「コロンブスがアメリカ大陸から持ち込んだ説」と「以前からヨーロッパで存在していたが梅毒とは認識できなかった説」です。いまだに解明されていませんね。

1492年にコロンブスがアメリカ大陸までの航路を発見した時期に、梅毒は世界中で急激に広まります。

ヨーロッパ・アメリカ大陸では1490年代、中国では1500年前後、日本では1512年には感染が記録されています。交通が未発達な時代に短期間で世界中に広まるとは驚きです。

当時は治療法がなかったため梅毒による死者は非常に多かったとされています。一時期は患者数が減りましたが、近年は梅毒の患者数が毎年増えている状態です。

梅毒は放置すると危険な感染症

梅毒の初期症状は比較的軽く、時間の経過とともになくなるので完治したと勘違いしやすいものです。また、主に性行為によって感染するので人に言いづらいケースもあるでしょう。

ですが、症状が治まったからといって完治したわけではありません。症状は感じられなくてもウィルスは体を蝕んでいます。

治療をしないまま3年以上が経過した場合、顔の形が変わるほどの腫瘍や臓器や脳が侵され最悪の場合死に至ります。

抗生物質が発達した現在では梅毒の治療が可能となりました。早期の発見と治療は感染拡大を防ぐだけでなく、自分自身を守る事につながるので、感染の疑いがあった場合は早期の受診が重要です。

パンデミックの歴史⑥【HIV/AIDS】

HIV/AIDS(以下エイズ)は新しい感染症で、1981年に最初の患者が発見されます。一説には1930年代にエイズは存在していた、という説もありますね。

発見から40年しかたっていない状況ですが、2018年の時点で世界では約3700万人が感染、これまでに3500万人を超える死者を出してきました。

現在もパンデミックとなっており、世界中で毎年100万人を超える患者が増えている状況です。結核・マラリアと並び「三大感染症」の一つになっています。

HIVとAIDSの違い

勘違いしやすいですが「HIV=AIDS」ではありません。それぞれ違うものとして分けられています。

HIVとは

HIVは「ヒト免疫不全ウィルス(Human Immunodeficiency Virus)」のことで、ウィルスの名前です。

AIDS(エイズ)とは

AIDSは「後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome)」のことで、病気の名前です。

HIVに感染した人が、免疫力の低下によって「指定された23の合併症のいずれか」を発症した状態がエイズという訳です。

ですので、HIVに感染しても「指定された23の合併症のいずれか」を発症していなければエイズとは言いません。

HIVはエイズの原因となるウィルスで、エイズはHIV感染によって疾患する病気ということですね。

エイズってどんな感染症?

HIVは血液・精液・膣分泌液・母乳を介して感染するため、「性行為による感染」「血液感染」「母子感染」が感染経路です。性行為による感染が最も多いとされていますね。

HIV感染から2~3週間でインフルエンザのような症状が現れることがあります。無症状の場合もあるので発見が遅れる原因となってしまうのです。この期間を「急性感染期」といいます。

初期症状なので、この時点で治療を開始するのが望ましいとされているので、上記の症状と併せて梅毒・淋病といった性病が現れた際にはHIV感染を疑うことが重要ですね。

多くの場合は急性感染期が過ぎると症状がなくなり、5~10年間無症状が続きます。その間、ウィルスは増殖し、免疫細胞は減っていくのです。この期間を「無症候期」といいます。

免疫機能が弱ってくると「発病期」となり、体重の減少・発熱・倦怠感・リンパ節の腫れ・帯状疱疹といった症状があらわれます。この時点で医療機関に訪れて、検査によりHIV感染が発覚するケースが多いそうです。

さらに免疫力が低下すると、健康な人であれば疾患することのない病気、つまり「指定された23の合併症のいずれか」を発症し、エイズの発症と判断されるのです。

エイズは治療可能?

残念なことに、現在ではHIVを体内から取り除くことはできません。そのため、エイズは不治の病として多くの人の命を奪ってきました。

ですが、医療の進歩により様々な治療薬が開発されています。薬を服用することにより、HIVの増殖を防ぐことで免疫力の低下を防ぐことが可能となっています。

きちんとした治療を受けることで、子供を安全に出産できるだけでなく、人間の平均寿命まで生きることが可能となったのです。普通の生活が送れるわけですね。

そのためには早期の発見が重要となってくるので、HIV感染が疑わしいと感じたら早めに検査を受けることが大切です。

パンデミックの歴史⑦【コロナウィルス】

コロナウィルスは身近なウィルスだったのはご存知でしたか?誰しも一度はかかった事のある病気の原因となるウィルスです。その病気とは「風邪」です。

人が風邪をひく原因の7~8割はウィルスとされており、そのうちの半分が「ライノウィルス」が原因とされています。コロナウィルスは全体の15%で、冬に感染しやすいウィルスです。

一方、コウモリやラクダといった動物から人に感染するものが、パンデミックの原因となった重症肺炎ウィルス「SARSコロナウィルス」「MERSコロナウィルス」「新型コロナウィルス」ですね。これら3つは致死性を持つため危険とされているのです。

特に新型コロナウィルスは感染力が強く、2020年5月の時点では世界で400万人を超える感染者、28万人を超える死者がでています。

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)ってどんな感染症?

症状は幅広く、無症状から風邪に近い症状、重度の肺炎、死亡と様々です。潜伏期間は2~14日で、よくある症状としては発熱・咳・痰・頭痛・下痢といった風邪に近い症状のため区別するのが困難です。

他の症状として嗅覚や味覚に障害をきたす場合もあります。風邪のような症状は1週間ほど続きますが、症状が長引く場合には合併症を併発する可能性があります。

具体的には高熱・気管支炎・肺炎で、重症になると呼吸不全を起こすことも。また、ウィルスが血液の流れによって全身に拡散することにより、脳炎や多臓器不全などを引き起こすことが確認されています。

主な感染経路は「接触感染」と「空気感染」です。無症状であっても感染源となる可能性は十分にあるので、マスクの着用・石鹸による手洗い・アルコール消毒・人との距離・不要な外出は避けるといった対策が重要になります。

まとめ

過去には様々な感染症が蔓延し、多くの人が犠牲になりました。現在もそうであるように、これから先もパンデミックは必ず起こります。どんなに医療が発達しても、科学が進歩しても混乱は起きるでしょう。

そんな時、個人個人がどう対処していくかが重要になります。例えば、新型コロナウィルスが流行した時にはトイレットペーパー・マスク・食料品の品切れが起こりましたよね。

これらを普段から備蓄するだけで、同じ事態になっても慌てることがありません。急いで買う必要がないので買い物の列に並ぶ必要もなく、感染の可能性も低くなるオマケつきです。

過去の出来事を振り返ることは、対策を練るうえで非常に大切なことです。自分自身だけでなく、家族を守るためにも個人として何ができるか考えていきたいですね。

~人類を脅かす自然災害~パンデミックの歴史を振り返る【前編】この記事では、過去に発生したパンデミック(感染症の世界的な流行)を紹介しています。どんな感染症が世界中で流行し、どのくらいの被害をもたらしたのかを解説しています。他にも、感染症の症状や感染経路も解説しているので、対策をするうえで役立つ内容になっていますよ!...
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