台風が発生した際に発表される警報・注意報の中に「高潮」があります。けれど、「いままで高潮なんて起こったことがないや」と感じる方もいれば、「また高潮かよ・・・」と高潮を何度も経験している方がいることでしょう。
高潮は発生しやすい場所があります。この記事では、高潮が発生しやすい地域や危険な場所について、その理由と併せて解説しています。
他にも、高潮が発生した際の注意点も紹介しているので、実際に高潮が発生した際の対策に役立つ内容になっています。
特に沿岸部に住んでいる方は高潮による被害が発生する可能性があるので、当記事を役立ててください!
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目次
高潮の際の危険な場所
ここでは、高潮の際の危険な場所を紹介していきます。なぜその場所が危険なのかも解説しているので、住んでいる地域が当てはまっているか確認してみてください。
海抜ゼロメートル地帯

海抜ゼロメートル地帯とは、満潮時の平均海水面よりも低い土地のことを指します。堤防により海水の流入を防いでいるわけですが、その堤防を超える潮位や波が発生すると浸水してしまいます。
海抜ゼロメートル地帯の厄介なところは水捌けが困難なところですね。土地が海水面より低いため、浸水した水を放流するためにはポンプなどで汲み上げなければいけません。
自然放流が困難なため、一度浸水被害が発生すると水が完全になくなるまで数週間はかかるでしょう。
高潮により堤防が決壊するようなことがあれば、一帯が水没し壊滅的なダメージとなるため警戒が必要です。
湾奥部・港内・河口

風速が強く、湾が長く、水深が浅いほど海水面が上昇します。台風時の湾奥部はこの条件に当てはまるわけですね。
港内は船が停泊する場所であるため、陸地と海水面までの高さの差はさほどありません。したがって、異常なほどの潮位の上昇が起こると海水面は簡単に陸地を乗り越えてしまいます。
河川と海の合流地点である河口付近では、高潮による流入と河川からの流入がぶつかることで、さらに潮位が上昇する可能性があります。河川の逆流による洪水にも注意が必要ですね。
V字谷となっている海岸線

真上から見るとVの字の様に奥が狭まるような地形では、高潮で吹き押せられた海水が一点に集中して急激な潮位の上昇が起こります。
海岸線を車で走っていたらいきなり高波にのまれた、なんて自体が起こり得るので注意が必要です。
海底が遠浅・急深な地形

沖の方まで水深の浅い遠浅な場所では、強風によって吹き寄せられた海水は戻りにくくなるため、どんどん吹き寄せられる海水により潮位の上昇が大きくなります。湾に多い地形です。
また、急に水深が深くなる急深な場所では、水深の深い場所で吸い上げ、吹き寄せられた海水が、水深の浅い場所へ駆けあがるように一気に流れ込むので急激な潮位の上昇が起こります。
高潮が発生しやすい地域

台風は反時計回りの風向きで北上していくため、進路と風向きが一致する台風の中心から東側は特に風が強くなります。南から北側へ吹く風が強いわけですね。
そして、高潮は風速が強く、湾が長く、水深が浅いほど海水面が上昇するという特徴があります。この条件を満たしているのが湾であると前の項目で解説しました。
湾の入り口(湾口)が南向きである場所は強風による影響をモロに受けるため、高潮が発生しやすいのです。
実際にはどんな場所が発生しやすいの?
東京湾・伊勢湾・大阪湾・有明海といった太平洋に面している湾は高潮が発生しやすい場所とされています。
過去の高潮の発生件数においても、日本海側と比べて太平洋側の方が圧倒的に多いです。日本海側で高潮が少ないのは、湾口部が北側に位置している場所が多いためですね。
とはいえ、日本海側では高潮が発生しないというわけではありません。気象条件や地形によって高潮が発生する可能性があるので警戒は怠らないようにしましょう。
高潮は時間帯による潮位の変動に注意

潮位の変動は高潮だけが原因ではありません。何もない日常でも潮位の変動はあります。そう、満潮・干潮・大潮・小潮です。これらは月や太陽の引力などが原因となっているため「天文潮位」と呼んでいます。
満潮や大潮による潮位の上昇と高潮による潮位の上昇が加わることで、より大きな潮位の上昇となるので注意が必要です。
満潮・干潮→半日周期で変動。1日2回、満潮と干潮となる時間があります。
大潮・小潮→半月周期で変動。新月と満月の時が大潮となります。
過去に発生した高潮による被害

昭和三大台風の一つである伊勢湾台風。4000名を超える死者をだした台風災害で最悪ともいえるこの災害では、高潮による被害が大きかったとされています。
満潮時を外れていたにもかかわらず、猛烈な吸い上げ・吹き寄せ効果と伊勢湾の遠浅の地形が記録的な高潮を発生させたのです。平均海面上3.89メートルは観測史上最高の水位となります。
室戸台風も昭和三大台風の一つであり、高潮により甚大な被害となった台風災害です。こちらも満潮の時間ではなかったのですが、満潮の影響が残っており潮位が高い状況でした。
加えて最大瞬間風速60m/sという暴風により4メートルを超える高潮が発生しました。30分間に200cmを超える海水の流入があり、あまりにも急な水位の上昇に避難が間に合わず、死者が1000名を超える大惨事となったのです。
高潮が予想される場合は早めの避難を

高潮による被害は現在でも発生しています。気象災害は予測が難しく、予測を超える災害や台風が予測進路から外れることは珍しくありません。
特に怖いのは、予測を超える災害が発生した時です。急激な潮位の変動が起こったら避難が間に合わない可能性があるでしょう。ですので、高潮の発生が予想された際には早めの避難を心掛けましょう。
地域のハザードマップを確認し、高潮による被害や浸水被害が想定される地域であれば、あらかじめ避難場所と避難経路を決めておくことが重要です。
また、台風が発生した際には気象情報をチェックし、警報・注意報が発表されていたら避難準備・避難を開始しましょう。
まとめ
高潮の際の危険な場所をまとめると
- 海抜ゼロメートル地帯
- 湾奥部・港内・河口
- V字谷となっている海岸線
- 海底が遠浅・急深な地形
です。特に台風による強風が吹き込みやすく、高潮が発生しやすい地形である太平洋側の湾では警戒が必要となります。
台風が接近した際には気象情報をチェックし、警報・注意報が発表されていた場合には早めに避難を開始しましょう。
海に囲まれている日本では、高潮による被害はどこでも起こり得ます。発生する可能性の低い地域でも警戒は怠らないようにしましょう。
