台風や発達した低気圧の発生に伴い、異常な潮位の上昇が起こる現象を高潮と呼びます。過去、幾度となく甚大な被害を与えてきた警戒すべき災害ですね。
この記事では、高潮の発生に備えた対策を紹介しています。高潮に関する警報・注意報の解説や避難する際のポイントを紹介しているので、実際に活用できる内容になっています。
他にも、日常からできる高潮への対策を紹介しているので、高潮への対策が不十分と感じている方は、対策の見直しをするうえで参考にしてみてください!
出典:https://www.photo-ac.com/
目次
高潮により想定される被害

高潮による被害には様々なものがあります。具体的にどのような被害が想定されるか見ていきましょう。
人的被害
たかが50cmや1mの浸水と甘く見てしまいがちですが、これくらいの水位の海水が流れてくると身動きができないばかりか、海水に足をとられて飲み込まれてしまいます。
一度海水に飲み込まれてしまえばどうすることもできず、最悪の場合そのまま溺死してしまう可能性があります。
また、海水はあらゆるものを流すため、漂流物にぶつかってケガをすることも考えられるでしょう。
漂流物以外にも、泥や埃、菌の付着した異物が海水には含まれているため、海水を飲み込んでしまうと感染症などの病気になる危険があります。
家屋の被害
浸水の度合いによっては家屋の流出や倒壊といった被害が起こります。家屋の浸水だけで済んだとしても、海水をかぶった家屋は柱が腐ってしまうので、住めなくなってしまう事態になります。
浸水により、家具や家電が使い物にならなくなってしまうことも考えられますね。資産の損壊です。
住宅の修理や建て替え、家財の買い直しといった災害による金銭の支出も、被害の一つといえるでしょう。
ライフラインの被害
電気・ガス・水道といったライフラインにも被害が及びます。電柱が倒壊してしまえば、電気だけでなく通信にも影響がでますね。
広い範囲で道路が冠水してしまうと、水道・都市ガス・下水道・電気といった地下に埋没されている管や線の破損により、供給がストップしてしまいます。
プロパンガスであっても、ガスボンベが流されてしまう可能性があるため、あらゆるライフラインに影響を及ぼすでしょう。
交通被害
線路や道路が冠水してしまえば、電車や車での移動ができなくなってしまいます。特に車での移動がメインとなる地方では致命的ですね。
また、場所によっては道路や橋の損壊や堆積物による道路の遮断で取り残されてしまうという事態になります。
その他の被害
農業であれば農作物に大きな被害がでます。育てた農作物が全滅するだけでなく、畑や水田に海水が流入してしまうと、使い物にならなくなってしまいます。塩害ですね。
水産業では船や養殖いかだ、網の流出といった被害が起こり得ます。工業であれば工場設備の故障などの被害が考えられます。小売店だと、浸水により商品価値がなくなってしまいますね。
生活だけでなく職場へ与える被害も、私たちが生きていくうえで大きな影響を及ぼします。
高潮が予測される際には早めの避難を

高潮により想定される被害は数多くあります。そのうえで、私たちにできるのは「早めに安全な場所へ避難する」ことしかできません。
海水が押し寄せる威力というのは想像を絶するものです。僕自身、東日本大震災で津波を経験しましたが、町中の建物が跡形もなく消え去るほどの威力です。
高潮は津波ほどの威力はないにしろ、甚大な被害を与える災害には変わりありません。ですので、自分の命を守るために避難することを第一に考えましょう。
次の項目からは、実際に避難するうえでのポイントや知っておきたい情報を紹介していきますね!
高潮に関する警報・注意報
気象庁等の情報 | 市町村の対応 | 警戒レベル | |
警報級の可能性 |
|
1 | |
強風注意報 | 高潮注意報 | 第一次防災体制 第二次防災体制 |
2 |
暴風警報に切り替わる可能性の高い 強風警報 |
高潮警報に切り替える可能性の高い 高潮注意報 |
避難準備 高齢者等避難開始 第三次防災体制 |
3 |
暴風警報 または 暴風特別警報 |
高潮警報 または 高潮特別警報 |
避難勧告(台風の暴風域に入る前に) 避難指示(緊急) 第四次防災体制 |
4 |
災害発生情報 | 5 |
参考:気象庁ホームページ 高潮に関する防災気象情報の活用
参考元URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/ame_chuui/ame_chuui_p8-3.html
気象庁や市町村が発表する注意報・警報に関して捕捉があります。暴風警報が発表されている時の「高潮警報に切り替える可能性の高い高潮注意報」は、避難勧告となる警戒レベル4に相当します。
ちょっと分かりづらいですよね。この「切り替える可能性の高い」というのは、深夜や早朝の時間帯に高潮の規模が大きくなることが予想される場合に使用されます。
ほとんどの方が寝ている時間帯なので、気が付いた時には逃げ遅れていた・・・、なんてことがないように、夕方や夜の早い時間には避難を開始するなどの対策が必要になります。
警戒レベルってなに?
警戒レベルとは、災害が発生した際に私たちがどんな行動をとればいいのか理解しやすい様、警戒の度合いを5段階に分けたものです。
警戒レベル | 取るべき行動 |
1 | 災害への心構えを高める |
2 | ハザードマップ等で避難行動を確認 |
3 | 避難する準備 高齢者等は速やかに避難 |
4 | 速やかに避難 |
5 | 命を守るための最善の行動をとる |
参考:気象庁ホームページ 高潮に関する防災気象情報の活用
参考元URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/ame_chuui/ame_chuui_p8-3.html
ここで重要なのは、警戒レベル4となる前に安全な場所まで避難しておくことです。警報・注意報は地域単位で発表されるものです。ですが、同じ地域でも海岸から近かったり、離れていたりと場所によって状況が違います。
また、暴風警報が発表されていた場合、暴風により避難が困難となる可能性があります。警戒レベル4の時点で、速やかに避難しなければいけないほど危険な状況なので、早めの避難を心掛けましょう。
慌てずに避難を
台風や高潮に関する注意報は台風が上陸する前、接近した時に発表されます。台風が上陸して暴風域に入ると警報が発表されるといったように、徐々に警戒レベルを引き上げていくわけですね。
台風は地震と違い、進路や上陸する時間帯が予測できるため、余裕をもって避難準備をすることができます。この利点を生かし、慌てずに避難をしましょう。
避難場所・避難経路はあらかしめ決めておく

いざ避難しよう!と決めても、どこに避難していいのか分からずバタバタしていたら逃げ遅れた、見当違いの場所に避難してしまった、なんてことになりかねません。
あらかじめ避難場所と避難経路を決めておくことで、いざという時でもスムーズに避難することができます。
ハザードマップを確認し、自宅や職場が浸水被害想定区域であれば、どこに避難すべきか・どの経路で避難すべきかを決めておくことが重要です。
避難場所・避難経路が決まったら、散歩がてら直接歩いてみましょう。実際に足を運ぶことで「こっちの道の方がいいかも」といった発見ができますよ!
お住いの地域のハザードマップを確認したい方は以下のリンク先から調べることができます。簡単に調べることができるのでオススメです!
どんなところに避難したらいいの?

「海や河川から離れた場所」「高い場所」「丈夫な建物」が理想です。高潮の際には暴風となっている可能性があるため、丈夫な建物に避難すれば暴風からも身を守る事ができます。
親戚や知り合いの方が高台に住んでいれば、そちらに避難するのも一つの手です。その際は、前もって連絡を入れておくことを忘れないようにしましょう。
また、学校や公民館、市民体育館などの公共施設は、「指定緊急避難場所」や「指定避難所」となっている場合があるので、ハザードマップで確認してみましょう。
こんなところには注意しよう
台風による災害は高潮だけではありません。大雨や土砂災害、暴風といった災害も起こり得ます。せっかく避難したのに別の災害に遭った、なんてことがないように安全な避難場所を決めておきたいですね。
高潮からの避難に適さない場所として、屋外が挙げられます。「車の中にいれば安心!」と思ってしまいがちですが、暴風により車が飛ばされてしまう可能性があります。
また、大雨により土石流が起こる可能性のある谷沿いや、崖崩れが起こりやすい崖沿いも避けたいところです。
道が一本しかないような山道も、何かの拍子で道が塞がってしまったら孤立してしまうので避けたいですね。
高潮から避難する際の注意点

逃げ遅れた際の行動
避難しようとしたら外は暴風で身動きがとれない、目を覚ましたら周りが水びたしだった。逃げ遅れることでパニックになり、自ら危険な行動をしてしまうケースは少なくありません。
暴風や大雨で高台まで避難することが難しいと感じたら、無理に高台まで避難せず、近くにある高い建物に避難しましょう。
外に出ることが困難であれば、2階や3階など少しでも安全な場所へ避難しましょう。慌てずに、高い場所へ避難することが重要です。
車での避難は危険
災害が発生すると、多くの人が避難を開始するため道路が渋滞してしまうものです。そして、渋滞待ちの最中に高潮が襲ってくる可能性は十分にあります。
車は水深が50cmを超えてくると走行ができなくなったり、ドアの開閉が水圧により困難になったりと非常に危険です。どうしても車で避難をしたいという場合は、早い時間に避難を開始することを勧めます。
個人的には車での避難は賛成です。災害時において、いざという時に車内でも生活できるという点で、車は非常に役立つものですからね。もう一度言いますが、車で避難する場合には渋滞に注意しましょう!
自宅が被災してしまったら
高潮により自宅が被災し、住める状況ではなくなった場合は「指定避難所」を活用しましょう。
指定避難所とは、災害の危険性があり避難した住民等が、災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在し、または災害により自宅へ戻れなくなった住民等が一時的に滞在することを目的とした施設です。
「指定緊急避難場所」というものもありますが、こちらは津波、洪水等、災害による危険が切迫した状況において、住民等の生命の安全の確保を目的として住民等が緊急に避難する際の避難先になります。
避難場所としてはどちらも一緒なのですが、指定緊急避難場所は自宅が被災した場合の一時的な滞在先として利用することができない点に注意しましょう。
指定緊急避難場所は以下のリンク先から検索することができます。指定避難所についてはお住いの市町村ホームページから検索できますよ!
高潮被害への対策

高潮による被害の備えとして日常からできる対策を2つ紹介します。どちらも生活に大きく係わってくる問題なので、まだ対策をしていない場合は参考にしてみてください。
備蓄
高潮による浸水被害等により電気・ガス・水道といったライフラインがストップしてしまったら、生活に支障をきたしてしまうのは容易に想像できますよね。そんな時に役立つのが備蓄です。
停電であればランタンやポータブル電源、断水なら非常用トイレや水、ガスが使用できないならカセットコンロといったように、災害時に役立つものを備蓄しておくことで対応することができます。
また、被災地ではあらゆるものが手に入りにくくなるものです。災害により物流が停滞するのと、物を求める人が殺到するためですね。だからこそ、日常から備蓄をしておくことが重要になります。
備蓄品は2階以上の場所へ保管しておくことで、浸水により使い物にならなくなるトラブルを防ぐことができます。
こちらでは東日本大震災で被災した経験をもとに、実際に役に立ったものや「こんなものがあれば良かった」というものをピックアップしています。どんなものを備蓄していいのかわからない方はチェックしてください!

保険
浸水により住宅の修繕費用や家財の買い直し、建て替えが必要だけど住宅ローンが残っている・・・、被災したことにより「お金」の問題を抱える事例が多いのはご存知でしたか?
災害の度合いによっては補助金が支給されますが、支給されるとも限らないですし、補助金だけで賄えるものではありません。
そういったお金の問題の手助けとなるのが保険です。実際、僕の実家は東日本大震災で津波により全壊しましたが、残った住宅ローンは津波保険に加入していたことにより完済できました。
保険も備蓄と同様に、いざという時のために日常から行う災害対策です。特に災害が起きやすい地域に住んでいる場合は、保険の在り方を見直してみてはいかがでしょうか。
台風や高潮による被害はどの保険で補償されるの?
「火災保険」です。ただし、火災保険でも保険会社によって「風災補償」「水災補償」と分かれていたり、建物と家財とで掛ける保険が分かれている場合があります。
また、どのような被害で補償の対象となるのか、どこまで補償してくれるのか理解しておかないと、「思ってたのと違った」とトラブルの原因になりかねません。
とはいえ、保険に対して詳しい知識がないこちらとしては理解するのにも限界がありますよね。ですので、保険の契約をする際には納得がいくまで話し合ったうえで契約するようにしましょう。
住宅本舗の火災保険一括見積もりサービスなら保険プランナーが居住地域で異なる災害の種類などを考慮し、適切なプランを設計してくれます。
Webのみでの手続きだと、最適なプランを選ぶのに知識が必要なことがあります。保険プランナーと相談しながらプランを選べるのは大きなメリットですね。
まとめ
高潮は、私たちの命だけでなく生活を脅かす災害です。だからこそ、高潮の発生が予測された際には避難することが必要になります。
テレビやラジオ等から発表される警報・注意報だけでなく、市町村から発表される避難勧告や避難指示に従い、早めの避難を心掛けましょう。
高潮の発生に備えて避難場所や避難経路をあらかじめ決めておくことで、いざという時にスムーズに避難することができます。
また、災害は発生後にも大きな爪痕を残すものです。日常からできる高潮への対策が不十分であれば、対策の見直しをしてみることが大切です。
